2025-09

【新入荷】いつも世界は遠く、 / 上田義彦

いつも世界は遠く、 / 上田義彦
ご購入はこちら→ https://artlabo.ocnk.net/product/10654

 

国内外の様々な賞を受賞している日本を代表するフォトグラファーの一人、上田義彦による写真集。
本書は、上田義彦の代表作から未発表の初期作品、最新作まで、自ら現像とプリントを手がけた約580点を収録し、768ページにわたりその40年の軌跡を現すものです。

森や家族、河、建物、標本、紙、林檎の木、ポートレート。アートや広告といった枠組にとらわれることなく、上田の一貫して真摯で鋭い眼差しは、世界に存在するさまざまなモチーフを最高の瞬間として捉え、観るものを魅了してきました。

自身を取り巻く世界の機微を敏感に察知し、対象への想いを一瞬のシャッターに込める──

「From the Hip」(英題)が象徴する、直感に裏打ちされ、偶然と必然が交差する瞬間に写し撮られた写真は、遥かな時の流れの中の切り取られた一瞬として、見る者の記憶や感情と響きあってきました。

本書の構成は、通常のレトロスペクティブの趣と異なり、一度シリーズとして発表された代表作品を撮影年順に解きほぐし、さらに上田自身の手で最新作から時系列を逆にたどるかたちで編まれました。それは上田の写真がいつも新鮮に立ち現れ、各シリーズをもう一度遥かな時間へと開いていくことを体現するものです。写真を全方位に開いていくありようのなかで、「いつも世界は遠く、」という響きは、上田の写真の魅力のひとつでもあり、写真に本質的に伴う「距離」を浮かび上がらせます。

約20年間にわたり撮影された、サントリー烏龍茶の広告写真と中国の記録「いつでも夢を」には、上田が風景と向き合うたびに感じたという「遠さ」「遥か感」が漂います。カメラという媒体が持つ特性により、懐かしさと普遍性が加わった唯一無二の写真であり、長年の時間をかけて洗練された、被写体との理想的な距離感と、全体に行き渡る空気感が美しく融合しています。

ポートレート写真もまた、上田の重要な領域です。広告写真としても多く目にする、美しく構成された背景の中に人物が慎重に配された作品から、フレームに収まりきらない接写まで、親密さと緊張感が交錯する「近くて遠い」距離感が現れています。

母・源を意味する「Māter」、被写体の輪郭を溶かすように焦点がぼかされた「M.Ganges」「M.river」、太古の森を歩き、生命の大元と対峙するように写された「Quinault」「Materia」などの作品は、はるか彼方の時間に眠るものを表出しようとする試みでした。

家族の写真から13年間にわたる記録を厳選し、妻の日記の文章が添えられた「At Home」、そして最初期作品である学生時代の卒業制作──いずれのシリーズにおいても、上田の作品に刻まれた光の痕跡は、物理的、心理的・時間的「距離」を越えてやって来たものであり、節度や抑制とともに、そこに憧憬、希求を静かに呼び起こします。

また、旅の途上で上田が綴った未公開の日記やメモが初収録されていることも、本書の大きな魅力です。光や影、見ることの歓びについて書かれた言葉の数々は、写真の秘密へと触れようとする思索の断片として、もうひとつの軌跡を形づくっています。

上田は、自作について語るとき「奇跡」という言葉をよく使います。それは、写真という不可思議な営みが、自身の意図や行為だけで完結するものではなく、自分の外側にある要素──おそらく写真そのものが持つ偶然性や一回性、そして「距離」に大きく左右されることを知っているからかもしれません。

『いつも世界は遠く、』は、流れる時間を心から愛し慈しみ、今もなお、その遠さの向こうに世界を愛おしく見つめ続ける、上田義彦の眼差しの「旅」と言えるでしょう。四十年の写真の軌跡は、私たちの時間と静かに響き合い、世界との出会いをあたらしくひらいてゆきます。

2025-09-05 | Posted in NewsComments Closed 

 

【新入荷】NEUTRAL COLORS 6 : 滞在で感じた あの特別な時間はなんだ

 

NEUTRAL COLORS 6 : 滞在で感じた あの特別な時間はなんだ
ご購入はこちら→ https://artlabo.ocnk.net/product/10621

 

NEUTRAL、TRANSIT、ATLANTIS を世に送り出してきた、編集者・加藤直徳と、気鋭のデザイナー・加納大輔が二人三脚で発行する、インディペンデントな雑誌『NEUTRAL COLORS(ニュー・カラー)』。「超個人的」な体験や創作、記憶をリソグラフなどのハンドメイドな印刷手法を交えながら唯一無二の誌面で発信していきます。

第6号は、『滞在』特集、「滞在で感じた あの特別な時間はなんだ」。
ホーチミンではなにもしない滞在をし、廃棄物でプロダクトをつくる「Nem Space」を訪ねました。アムステルダムの活版印刷所に滞在し印刷したのは、デザイナーの平山みな美さん。吉田勝信さんとは山で採取した土でインクを制作し、シルクスクリーンで1枚ずつ手刷りしました。デレク・ジャーマンの庭に思いを馳せ、ON READINGでは11日間滞在し雑誌をみんなで編みました。名古屋みなとに滞在する長島有里枝さんに密着し、NC編集部で滞在制作する写真家を受け入れました。滞在とは?表紙にも書きましたが、とても不思議な感情でした。

いつかの滞在を思い出したり、未来の滞在に思いを馳せられるような内容になっています。

※ON READINGで滞在制作した『NEUTRAL COLORS 別冊 ほんとの本の話をしよう #1』もぜひ併せてどうぞ。
https://artlabo.ocnk.net/product/10065

2025-09-05 | Posted in NewsComments Closed