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網代幸介 個展 『もうひとつのおはなし』
網代幸介 個展 『もうひとつのおはなし』
Kosuke Ajiro Exhibition “Another Story”
2017年9月13日(水)~9月25日(月)
作家在廊日:9/13(水)、9/23(土)、9/24(日)、9/25(月)
現実と空想の間にある独自の世界を、平面、立体、アニメーションなどで表現する作家、網代幸介の個展を開催します。
ものがたりの、さらに奥に広がるものがたり。
それは誰も知らない、知ってはいけない、もうひとつの秘密のおはなし。
網代幸介 Kosuke Ajiro
1980年生まれ。東京在住の画家。これまで国内外の展示で作品を発表。平面、立体、アニメーションなど様々な方法で空想世界を表現。文芸誌MONKEYの装画、手紙社が主催する東京北欧市のメインビジュアルなど手がける。
kosukeajiro.tumblr.com
【展示記録】
網代幸介 個展 『もうひとつのおはなし』
今回の展示は、7月に東京・西荻窪のウレシカさんで開催された、退廃した世界を平らかにするため、あちこちに散らばる神様たちを祀る塔を設計したある男の物語「サリーの設計図」のスピンオフ。塔を設計した男の娘が、夢の世界で旅をする、というのが今回の作品。
絵が入った額の後ろから煙がもくもくと立ち上がったり、蜜が垂れたり。おもちゃ同士が喧嘩をしたり、動物が集まってきたり、夢の世界では奇妙なことばかり。夢の世界には7日間しかいられないという掟があり、1日ごとに見守り役であるヤギ男が増えていく。7日目の夜が過ぎてしまうと、体から根っこが生えて、現実世界にもどれなくなってしまう。そんな時、古くから伝わるおまじない「おまえを”心臓高い高い”するぞ」を心で唱えれば、ヤギ男は恐れをなして逃げていく。ヤギ男がいなくなれば、現実世界と夢の世界を自由に行き来できるようになる。――父親は生きているのか、娘は何のために夢の世界を旅しているのか、それはまた、べつのお話。
DMになっている作品は、本の形になっていて、それを開くと内側にもう1冊の本が入っています。
これは、「誰が書いたものかわからない日記のようなもの」だそう。
中には絵や読めない文字がぎっしり。これを描いた人はきっと、自分だけのもうひとつの世界をこのノートにしたためて、そして、誰にも見つからないように、本型のオブジェの中に隠したのかもしれません。
この、「しまうことができる」立体作品は過去にも多く見られます。「しまう」ことができるということは、内側と外側の世界を自由に行き来できるということ。これは、網代さんが作品について説明されるときにもよく聞かれる言葉で、空想の世界に行きっぱなしなのではなく、現実世界と行き来できる状態であることが大事なのだといいます。
網代さんの頭の中に広がるもうひとつの世界では、善と悪、聖と俗、生と死の境があいまいで、怖いことも起こるけれどどこかおおらかで優しい印象を受けます。そして、頭に浮かぶまま、歌を歌いながら描いているかのような絵は、まるで古代の壁画や巻物に描かれた叙事詩のように、流れるように綴られています。観ているこちらも、どこからでも話を膨らませていけるような気がして、ご来場の皆さんと絵を見ながらあれこれお話をして絵の中で遊ぶことができました。
2年前に、展覧会を開催した時から、また違うフェーズに来ているな、と思う網代作品。展示ごとに違う作品を作りあげていらっしゃるので、今後も目が離せません!